エアロプレスは、コーヒー粉の量、お湯の温度、抽出時間を変えるだけで、すっきりした味から濃厚な味まで作り分けられる抽出器具です。一方で、調整できる項目が多いため、「最初はどのレシピで淹れればよいのか」と迷う方も少なくありません。
初めて使う場合は、まず基準となるレシピを固定し、味を確認しながら一つの項目だけを調整するのがおすすめです。この記事では、初心者でも再現しやすい基本のエアロプレスレシピをはじめ、浅煎り・深煎り豆に合わせた淹れ方、アイスコーヒーやカフェラテ用のアレンジまで紹介します。
まず試したい基本のエアロプレスレシピ

最初の一杯には、器具をカップの上に置いて抽出するスタンダード方式がおすすめです。操作がわかりやすく、器具が安定しているため、安全に淹れやすい方法です。
| 項目 | 基本の設定 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 14g |
| 挽き目 | 中細挽き |
| お湯 | 200g |
| 湯温 | 85〜90℃ |
| 浸漬時間 | 約1分30秒 |
| プレス時間 | 20〜30秒 |
| 完成までの時間 | 約2分 |
基本レシピの手順
- フィルターキャップにペーパーフィルターを入れ、チャンバーにしっかり取り付けます。
- エアロプレスを安定したカップやサーバーの上に置きます。
- 中細挽きにしたコーヒー粉14gを入れ、軽く揺すって表面を平らにします。
- タイマーを開始し、85〜90℃のお湯200gを20秒ほどかけて注ぎます。
- 付属のパドルやスプーンで、粉とお湯がなじむように3〜5回ほど混ぜます。
- プランジャーをチャンバーの上部に少し差し込み、お湯が落ち続けるのを抑えます。
- 注ぎ始めから1分30秒ほど待ちます。
- プランジャーを外さずに器具を軽く回し、さらに10秒ほど待ちます。
- 20〜30秒かけて、ゆっくりプレスします。
お湯は水とほぼ同じ感覚で計量できるため、200gを約200mlとして扱えます。目盛りだけでも抽出できますが、キッチンスケールを使うと味を再現しやすくなります。
エアロプレスのスタンダード方式とインバート方式の違い

エアロプレスでは、通常のスタンダード方式に加えて、器具を逆さまにして抽出するインバート方式も知られています。ただし、初めて使う方にはスタンダード方式が適しています。
安全で再現しやすいスタンダード方式
スタンダード方式は、フィルターキャップを下にして、エアロプレスをカップの上に置く方法です。器具が安定しやすく、そのままお湯を注いでプレスできます。
お湯を注いでいる途中に少量のコーヒーが落ちることがありますが、わずかな量であれば問題ありません。粉の表面を平らにしてから、ゆっくりお湯を注ぐと流れ落ちる量を抑えやすくなります。
さらに抽出時間を確保したい場合は、お湯を注いだ後にプランジャーを1cmほど差し込みます。内部が密閉され、コーヒーが落ち続けるのを抑えられます。
インバート方式は転倒ややけどに注意
インバート方式は、プランジャーを少し差し込んだ状態で器具を逆さまに立て、チャンバー内にコーヒー粉とお湯を入れる方法です。抽出中にお湯がフィルターから落ちないため、浸漬時間を管理しやすいという特徴があります。
一方で、逆さまにした器具は接地面が狭く、お湯を入れた状態で倒れる危険があります。抽出後にはフィルターキャップを取り付け、熱い液体が入った器具をひっくり返さなければなりません。
メーカーも転倒ややけどの危険があるとして、インバート方式を推奨していません。お湯の落下を防ぎながら長く浸漬したい場合は、スタンダード方式でプランジャーを差し込む方法を試しましょう。
初心者はスタンダード方式から始めるのがおすすめです。抽出方式そのものよりも、粉量、挽き目、湯温、時間をそろえるほうが味を安定させやすくなります。
焙煎度に合わせたエアロプレスレシピ

コーヒー豆は、焙煎度によって成分の溶け出しやすさが異なります。基本レシピで酸っぱさや苦味が気になったときは、豆の焙煎度に合わせて挽き目や湯温を調整してみましょう。
浅煎り豆の香りと甘みを引き出すレシピ
浅煎り豆は成分が溶け出しにくいため、細かめの挽き目、高めの湯温、長めの抽出時間が調整の出発点になります。
| 項目 | 浅煎り向けの目安 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 12〜14g |
| 挽き目 | 中細挽き |
| お湯 | 200g |
| 湯温 | 92〜96℃ |
| 完成までの時間 | 2分〜2分30秒 |
高めの温度で抽出すると、浅煎り豆が持つ華やかな香りや甘みを引き出しやすくなります。酸味が鋭く、舌に刺さるように感じる場合は、挽き目を少し細かくするか、抽出時間を長くしてください。
反対に、酸味はあるものの後味が重く、乾いた渋みを感じる場合は、挽き目を粗くするか、湯温を少し下げて調整します。
中煎り豆に合わせやすいバランス重視のレシピ
中煎り豆は、酸味、甘み、苦味のバランスを取りやすいため、基本レシピをそのまま使用できます。豆14g、お湯200g、湯温85〜90℃を基準にしてください。
すっきり飲みたい場合は豆を13gに減らし、コクを強めたい場合は15gに増やします。初めから複数の項目を変更せず、まずは粉量だけを1gずつ動かすと好みの濃さを見つけやすくなります。
深煎り豆の苦味を抑えるレシピ
深煎り豆は成分が溶け出しやすいため、低めの湯温と少し粗めの挽き目から始めるのがおすすめです。
| 項目 | 深煎り向けの目安 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 14〜15g |
| 挽き目 | 中挽き〜中細挽き |
| お湯 | 200g |
| 湯温 | 80〜85℃ |
| 完成までの時間 | 1分30秒〜2分 |
苦味や焦げたような風味が強い場合は、湯温を下げる、挽き目を粗くする、抽出時間を短くするという順番で調整します。まろやかさを残したまま濃くしたい場合は、抽出を強めるのではなく、豆の量を1g増やす方法が適しています。
味を調整する4つのポイント

エアロプレスの味は、主に粉量とお湯の比率、挽き目、湯温、抽出時間によって変わります。攪拌も抽出を進める要素ですが、毎回同じ回数に固定すると味が安定します。
粉量とお湯の比率
コーヒーを濃くしたいときに最もわかりやすい方法は、豆の量を増やすことです。基本の14gに対して、濃くしたい場合は15〜16g、軽くしたい場合は12〜13gを試してください。
抽出条件を大きく変えずに濃度を調整できるため、苦味や酸味のバランスを崩しにくい方法です。
挽き目
細かく挽くほどコーヒーの成分が溶け出しやすくなり、粗く挽くほど抽出は穏やかになります。
酸っぱくて薄い場合は少し細かくし、苦味や渋みが強い場合は少し粗くするのが基本です。
ただし、エスプレッソ用のように極端に細かくすると、プランジャーが押しにくくなります。中細挽きを基準に、ミルの目盛りを一段階ずつ変更しましょう。
お湯の温度
高い温度では成分が溶け出しやすく、低い温度では穏やかに抽出されます。浅煎りは高め、深煎りは低めにするのが調整の目安です。
温度計がない場合は、沸騰したお湯を別のケトルや容器に移すと温度を下げられます。ただし、室温や容器の材質によって下がり方が変わるため、安定した味を求める場合は温度計付きのケトルが便利です。
抽出時間と攪拌
抽出時間を長くすると味が濃くなりやすく、短くすると軽い味になりやすい傾向があります。また、攪拌を増やすと粉とお湯が接触しやすくなり、抽出が速く進みます。
味を比べるときは、「3回混ぜる」「1分30秒待つ」など、攪拌回数と時間を固定してください。毎回混ぜ方が変わると、挽き目や温度を調整しても違いを判断しにくくなります。
| 気になる味 | 試したい調整 |
|---|---|
| 酸っぱくて薄い | 細かく挽く、湯温を上げる、時間を延ばす |
| 苦味や渋みが強い | 粗く挽く、湯温を下げる、時間を短くする |
| 味の濃さが足りない | 豆を1〜2g増やす |
| 重すぎて飲みにくい | 豆を減らすか、抽出後にお湯を足す |
| 香りが弱い | 淹れる直前に豆を挽く |
ジェームズ・ホフマン氏のシンプルなレシピ

基準となるレシピを増やしたい方には、コーヒーの専門家として知られるジェームズ・ホフマン氏の方法も参考になります。攪拌を最小限に抑えた、再現しやすいスタンダード方式のレシピです。
使用する分量と抽出手順
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 11g |
| 挽き目 | 中挽きよりやや細かめ |
| お湯 | 200g |
| 湯温 | 浅煎りは沸騰直後が基準 |
| 待ち時間 | 2分+30秒 |
| プレス時間 | 約30秒 |
- ペーパーフィルターを入れたキャップをチャンバーに取り付けます。
- コーヒー粉11gを入れます。
- タイマーを開始し、粉全体をぬらすようにお湯200gを注ぎます。
- すぐにプランジャーを少し差し込み、2分待ちます。
- 器具を持って、やさしく円を描くように揺らします。
- さらに30秒待ちます。
- 約30秒かけて、ゆっくりプレスします。
深煎り豆を使う場合は、湯温を下げるか、挽き目を少し粗くすると苦味を抑えやすくなります。11gでは軽すぎると感じる場合は、抽出条件を変える前に豆を12〜13gへ増やしてみましょう。
世界大会のレシピを試すときの注意点

世界エアロプレス選手権では、通常より多くの豆を使う方法、低い湯温で短時間抽出する方法、抽出後にお湯を足す方法など、多様なレシピが考案されています。
大会レシピが複雑になりやすい理由
大会では、競技用として用意された特定のコーヒー豆から、限られた時間内で最も魅力的な味を引き出す必要があります。そのため、優勝レシピがすべての豆に合うとは限りません。
豆を大量に使うレシピや、専用の水、特殊な器具を使用するレシピもあります。家庭で再現するときは、分量をそのまま正解と考えるのではなく、抽出の考え方を参考にするとよいでしょう。
差し湯で濃度を整える方法
大会レシピでよく見られるのが、少ないお湯で濃く抽出し、完成後にお湯を足す方法です。この追加するお湯は、バイパスウォーターや差し湯と呼ばれます。
例えば、豆18gとお湯120gで濃いコーヒーを作り、抽出後に80gのお湯を加えれば、合計約200gのコーヒーになります。差し湯の量を調整するだけで、香りの印象を残しながら飲みやすい濃さに整えられます。
エアロプレスで作るアイスコーヒーのレシピ

エアロプレスでアイスコーヒーを作る場合は、お湯を減らし、その分を氷に置き換えます。濃いコーヒーを氷の上へ直接プレスすると、短時間で冷やせます。
急冷アイスコーヒーの分量
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 16g |
| 挽き目 | 中細挽き |
| お湯 | 120g |
| 氷 | 80g |
| 湯温 | 90℃前後 |
| 完成までの時間 | 約2分 |
- 丈夫なサーバーに氷80gを入れます。
- エアロプレスをサーバーの上に置き、コーヒー粉16gを入れます。
- お湯120gを注ぎ、3〜5回混ぜます。
- プランジャーを少し差し込み、1分20秒ほど待ちます。
- 20〜30秒かけて氷の上へプレスします。
- サーバーを回し、コーヒーと溶けた氷をしっかり混ぜます。
氷が残りすぎて濃く感じる場合は、少量の水を加えて調整します。反対に薄い場合は、お湯ではなく氷の量を減らすか、豆を1〜2g増やしてください。
カフェラテに使える濃縮コーヒーのレシピ

エアロプレスでは、豆を多くしてお湯を減らすことで、ミルクに合わせやすい濃縮コーヒーを作れます。エスプレッソマシンと同じ圧力ではないため、本来のエスプレッソとは異なりますが、家庭用のラテベースとして楽しめます。
濃縮コーヒーの分量と作り方
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| コーヒー豆 | 18g |
| 挽き目 | 中細挽き〜細挽き |
| お湯 | 70g |
| 湯温 | 85〜90℃ |
| 抽出時間 | 約1分 |
- コーヒー粉18gをチャンバーに入れます。
- お湯70gを注ぎ、粉が残らないようにしっかり混ぜます。
- 45秒ほど待ちます。
- 20〜30秒かけて、ゆっくりプレスします。
- 温めたミルク120〜150gを加えます。
深煎り豆を使うと、ミルクの甘みに負けにくいコクを出せます。苦味が強い場合は湯温を下げ、濃さが足りない場合は豆を増やしてください。
抽出した濃縮コーヒーは、アイスラテやアフォガートにも使用できます。氷や冷たいミルクと合わせる場合は、ホットラテより少し濃いめに仕上げると味がぼやけません。
ペーパーフィルターと金属フィルターの違い

エアロプレスは、使用するフィルターによって口当たりや香りの感じ方が変わります。好みの味に合わせて使い分けましょう。
すっきりした味になるペーパーフィルター
ペーパーフィルターは、微粉やコーヒーオイルを通しにくいため、口当たりがなめらかで、すっきりした味に仕上がります。後片付けも簡単なので、初心者にはペーパーフィルターがおすすめです。
フィルターを湯通しするかどうかは好みで決められます。紙のにおいが気になる場合や、カップと器具を温めたい場合は、抽出前に少量のお湯を通してください。
コクを残しやすい金属フィルター
金属フィルターはコーヒーオイルを通しやすく、ペーパーよりも厚みのある口当たりになります。繰り返し使用できる一方で、微粉がカップに入りやすく、フィルターの目詰まりを防ぐための洗浄も必要です。
金属フィルターはお湯が速く流れやすいことがあります。その場合は、粉を平らにならしてからゆっくり注ぐか、挽き目を少し細かくして調整します。
エアロプレスの味を安定させる道具

エアロプレスは目分量でも使えますが、毎回同じ味を作るには計量と時間の管理が重要です。最初から多くの器具をそろえる必要はありませんが、スケールとミルがあると調整しやすくなります。
キッチンスケール
キッチンスケールを使うと、コーヒー粉とお湯の量を同じ条件にそろえられます。家庭で使用する場合は、1g単位で量れるものでも十分です。細かなレシピを記録したい場合は、0.1g単位で量れるスケールが便利です。
タイマー機能がないスケールでも、スマートフォンのタイマーを併用できます。大切なのは、毎回同じタイミングで計測を始めることです。
粒度を調整できるコーヒーミル
コーヒー豆は、淹れる直前に挽くと香りを保ちやすくなります。また、粒の大きさがそろうミルを使えば、酸味と苦味が混在した不安定な味になりにくくなります。
エアロプレスでは挽き目による調整を頻繁に行うため、段階的に粒度を変更できるミルが適しています。手動と電動のどちらでも構いませんが、プロペラ式よりも臼式のミルのほうが粒度をそろえやすい傾向があります。
エアロプレスで失敗しやすい原因と対処法

基本レシピどおりに淹れても、プレスできない、コーヒーが薄いなどの問題が起きることがあります。器具の故障を疑う前に、挽き目や注ぎ方を確認してみましょう。
プランジャーが固くて押せない
プランジャーが極端に重い場合は、粉が細かすぎるか、細かな粉がフィルターをふさいでいる可能性があります。無理に押さず、いったん力を緩めてください。
次回から挽き目を少し粗くし、20〜40秒ほどかけてゆっくり押せる状態を目指します。器具を押すときは、必ず安定したカップやサーバーを使用してください。
お湯がすぐに落ちてしまう
お湯が大量に落ちる場合は、挽き目が粗い、粉の表面が傾いている、お湯を勢いよく注いでいるといった原因が考えられます。
粉を入れた後にチャンバーを軽く揺すって表面を平らにし、お湯をゆっくり注ぎましょう。それでも速く落ちる場合は、挽き目を一段階細かくします。
毎回味が変わる
粉量、お湯の量、温度、時間、攪拌回数のどれかが変わっている可能性があります。特に、お湯を注ぎ始めるタイミングとタイマーを押すタイミングがずれると、抽出時間が不安定になります。
最初は基本レシピをメモし、変更する項目を一つに限定してください。「挽き目だけを細かくする」「豆を1gだけ増やす」といった試し方をすると、味の変化を判断しやすくなります。
コーヒーに酸味と苦味の両方を感じる
粒度がそろっていないと、大きな粉からは十分に成分が出ず、細かな粉からは成分が出すぎることがあります。その結果、酸っぱさと苦味を同時に感じる場合があります。
ミルの刃を掃除し、均一に挽ける状態か確認してください。強く攪拌しすぎた場合にも細かな粉がフィルターへ集まりやすいため、混ぜ方を穏やかにする方法も有効です。
エアロプレスを安全に使うための注意点

エアロプレスでは熱いお湯を入れた器具に上から力を加えます。転倒ややけどを防ぐため、抽出前に器具とカップの状態を確認してください。
・薄く割れやすいグラスには直接プレスしない
・口が広く、安定した丈夫なカップやサーバーを使う
・フィルターキャップを最後までしっかり取り付ける
・プランジャーを無理な力で押さない
・抽出中の器具から手を離さない
・初心者はインバート方式を避ける
使用後はプランジャーを最後まで押し、コーヒーかすとフィルターを取り出します。器具を水ですすぎ、プランジャーのゴム部分をチャンバーに押し込んだまま保管しないようにすると、部品へ余計な圧力がかかりにくくなります。
自分好みのエアロプレスレシピを見つける方法
エアロプレスには、すべての豆に共通する唯一の正解はありません。豆の産地、焙煎度、鮮度、水の違いによって、適した挽き目や湯温は変わります。
まずは、豆14g、お湯200g、85〜90℃、約2分という基本レシピを試してください。その味を基準にして、次の順番で調整すると迷いにくくなります。
- 豆の量を変えて、好みの濃さに合わせます。
- 酸味や苦味を確認し、挽き目を調整します。
- 焙煎度に合わせて湯温を調整します。
- 最後に抽出時間や攪拌回数を微調整します。
一度に変更する項目は一つだけにすることが、好みのレシピへ近づくコツです。使用した豆、粉量、挽き目、湯温、時間、飲んだ感想を記録しておけば、おいしく淹れられた条件を再現できます。
基本のホットコーヒーに慣れたら、急冷アイスコーヒーやラテ用の濃縮レシピにも挑戦してみましょう。エアロプレスの調整しやすさを生かし、自分の好みに合った一杯を探してみてください。



